色について

制作
ブローチ 真鍮、緑青仕上げ 2021

金属で色を使う方法として、私なりにこだわっていることがありました。

地金の種類によってそれぞれ固有の色があるので、全く新たに色を着けるというよりは、徐々に変色することを見越した処置として(変色を防ぐ、または目立たなくするために)手を加えることが多いです。

大学生の頃に「煮色」という銅の着色方法を学んだことがきっかけなのですが、銅合金の表面に自然に発生する落ち着いた色(酸化膜など)には地金によって色々種類があり、それらを組み合わせて発色させる「色金」の技法を制作に取り入れて来ました。

リング 赤銅、四分一、シルバー925、煮色仕上げ 2017

銀の古美もやはり天然の色です。個人的に、鮮やかで人工的な色を付けるより、素材の持つ本来の色を大事にしたいと思っていました。

そのような経緯からか、どこか大胆に色を使うことには抵抗がありました。

金属には色の前に光沢という側面があります。仕上げ方にもよりますが、光り方や質感が金属らしさや重さなどを感じさせるように思います。

ただ最近、制作するコンセプトをよりはっきりさせるために「金属らしさ」や「重さ」を視覚的に消したいと思うことがあり、敢えて、光沢や調子が出ないように均一な色を塗装する試みも始めています。

新境地というか、方向が真逆(?)に近く、従来金属らしさが好きな自分との闘い(?)のような作業でもあります。

実際にやってみて改めて金属の持つ輝きの良さに気づいたり、また、塗装に関する知識や技術も学ぶことが沢山あり…

とりあえず、何事もやってみる精神で、新しいシリーズも制作中です。